恐竜・白亜紀ゆるゆる学習帳

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恐竜の絶滅の原因は何か?「決着!恐竜絶滅論争」岩波科学ライブラリー186

約6,600万年前の白亜紀末期、それまで地球上で最も栄えていた恐竜が、突如として絶滅の危機に瀕しました。
そう、鳥類を除いた恐竜はこの時に絶滅します。
「決着!恐竜絶滅論争」は恐竜絶滅の原因をめぐる科学者の論争を解説した本です。

みなさま、こんにちは。
カズヒロ@ウォーカーです。

もちろん恐竜絶滅の原因についても詳細に解説はされています。
皆さま、ご安心ください。

 

 

恐竜絶滅の原因論

「決着!恐竜絶滅論争」は、今は定説となっている恐竜絶滅の原因「小惑星衝突説」について、さまざまな論争を経て定説となった経緯について書かれています。

一般社会に広まりつつあった誤解を解くため

小惑星衝突説は1980年に発表された論文が元になっています。
その後、チチュルブクレーターが発見されるなどして、徐々に定説となっていきます。

*チチュルブクレーター:メキシコ ユカタン半島にある小惑星衝突跡

一方、世間一般には、「研究者の間でも、まだまだ論争が続いている」、「いや、実は違ったんだよ」というイメージすらあったと。

学会、研究者とメディア、あるいは世間一般の間のにあるギャップ。
これは小惑星衝突説をとる研究者たちがキチンと情報発信してこなかった、あるいは情報発信が足りなかったために起こった。

かたや、小惑星衝突説を否定するような論説は目立ちますし、インパクトもある。
世間に誤って広められることもあるでしょう。

ここが問題だと認識し始めた一部の研究者が、正確な情報を発信しようと動き出します。

大量絶滅の謎を解くカギ

「決着!恐竜絶滅論争」に記されている絶滅の原因について、細かくは書きません。

ただし、白亜紀末に絶滅してしまった生物と絶滅を免れた生物の比較から得られたキーワードを述べます。


本書によると、

光合成
K/Pg境界直後の様子
淡水

北半球

だそうです。

*K/Pg境界:白亜紀/古第三紀の境界のこと 約6,600万年前

絶滅原因論争において重要なキーワードで、これらを全て説明できる説でなくてはならないとされています。


絶滅を免れたのは?

白亜紀末の大量絶滅時代を生き延びたのは、鳥、哺乳類、淡水に住む爬虫類、両生類などの一部です。
重要なのが、光合成生物に依存していないということ。

食物連鎖ならぬ、「腐食連鎖」の環の中にいた生き物たちです。

*腐食連鎖:落ち葉、朽木、菌類、昆虫、生物の死骸などを食べる生物の連鎖


もう一つ、「淡水環境」です。

なんか不思議ですよね。
腐食連鎖は分からなくはないのですが、淡水に生息することが、なぜ大量絶滅を生き延びられることにつながるのか。

淡水に生息しているだけで生存確率がグッと上がる。

この不思議な現象も、もちろん小惑星衝突説では説明されています。

 

恐竜絶滅,小惑星衝突

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

いくつかの反論

ここで、「決着!恐竜絶滅論争」に記されている反論について少し。

反論1:漸進的絶滅説

恐竜は長い年月の間に、環境の変化などにより徐々に数(個体数や種類)を減らしていき、最後には絶滅したとする説。

反論2:火山噴火原因説

デカントラップという、とんでもない規模の噴火が気候変動や大気汚染を引き起こし、恐竜を絶滅させたとする説。

デカントラップ:インドのデカン高原にある白亜紀末から古第三紀にかけて噴出した玄武岩層のこと

反論3:小惑星衝突無関係説

文字通り、小惑星衝突は恐竜の絶滅に無関係だった、与えた影響は非常に軽微だったとする説。

各論の検証

「決着!恐竜絶滅論争」の5章で双方の論の検証が書かれています。
個人的に、この章が本書の中でもっとも読みごたえのある部分だと思っています。

小惑星衝突説の検証

先に提示した五つのキーワード、光合成、K/Pg境界直後の様子、淡水、酸、北半球を説明されます。
ここで、私が一番疑問だった「淡水」に対する回答も得られました。

この解説は素人の私にも分かりやすかったです。

あ~、スッキリした。

ここで解説すると長くなりますので、興味のある方はぜひ、本書を読んでみてください。

反論の検証

当然、反論に対し間違っているところ、不十分な内容の指摘なども分かりやすく解説されています。

特に、原因説としては、小惑星衝突説に対立する「火山噴火説」の不確かさをできれば、小惑星衝突説に有利になりますよね。


まあ、ここはキチンと論破しているのですが。


そして、「衝突説では説明できない。だから火山噴火説が正しい」では話にならないと、著者は語っています。

 

最期に

「決着!恐竜絶滅論争」はページ数もさほど多くなく、内容も科学論争を扱っているにしては理解しやすいと思います。

案外すぐに読めてしまいますが、内容は深いです。

K/Pg境界の入門書としても非常に優れた本ですね~。


それでも、まだまだ解明しなければならない謎も数多く残っていると著者は語ります。

論争には一応の決着がついた形ですが、新たな研究成果に基づく新たな恐竜絶滅原因論争も見てみたい気もしますね。

 

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